Member Interview Vol.02 / AKITO
紆余曲折の中で、辿り着いた道。
THINGS.に所属するモーショングラフィックデザイナー兼3DCGアーティスト、AKITO。
ミュージックビデオのディレクション、エディット、カラコレを経て、現在はモーショングラフィックスと3DCGの分野で活躍中。
Adoやぼっち・ざ・ろっくなどのMVを手掛ける中で、常に新しい映像とデザイン表現を追求しています。
今回は、彼の仕事へのアプローチ、キャリアの成長、そして映像制作に対する情熱について深掘りします。
Q. 所属しているチームのご紹介をお願いします
A. モーショングラフィックスや3DCGを用いたMV、PVを制作する部署に所属しています。
チーム内にて担当されているのはどのような仕事ですか
主にリリックビデオのディレクター、モーションデザイン、グラフィックデザインがメインで、
他にライブの背景映像や実写MVのVFX、コンポジットなども担当しています。
Q. THINGS.に入社したきっかけは何ですか?
大阪芸術大学に在学中、東京で映像ディレクターをしている先輩から、
「大阪でライブの撮影があるから手伝いに行って欲しい」と言われ、撮影で一緒になったのがTHINGS.との出会いでした。
そこからアシスタントとしてMV撮影に参加し、卒業するタイミングでTHINGS.にジョインさせていただきました。
オフィスでのAKITO。最近は愛犬たちに見守られながら作業している
Q. モーショングラフィックスと3DCGに特化した理由は何ですか?
A. 理由というよりかは、自分の価値を見出そうとした結果、モーショングラフィックスや3DCGの領域に辿り着いた感じです。
当初、自分は大学での学びや経験を元に実写のMVやライブ映像の編集を担当していましたが、メンバーのほとんどがディレクターだった当時のTHINGS.において、それだけでは…と、自分の社内での存在価値について考えはじめました。
そんな中、社内ではあまり手が付けられていない3DCG領域に着目し、未経験でありつつも、軽いVFX作業を任されながら、徐々にスキルを身につけていきました。
そしてその過程で、とあるリリックビデオのプロジェクトを担当する機会に巡りあい、後の自分にとって、この上ない学びや成長の機会となりました。
このプロジェクトでは、グラフィックデザインやモーションデザインなど、VFX以外の作業にも高いスキルが求められ、それらがまったく未知の分野だった自分にとっては、正直不安がありました。
しかしいざ挑戦してみると、実践の中でスキルを身につけていく過程そのものが楽しくなり、一気に、モーショングラフィックスと3DCGの領域にのめり込んでいきました。
そしてその頃、THINGS.に対するリリックビデオの需要が高まりつつあったので、自分がこの分野をメインで担当する形になりました。
メイン担当になったことで、プロジェクトの管理面にも携わることができ、コストの管理や、お客様とのやりとりの仕方など、クライアントワークにおいて欠かせないビジネススキルも会得できました。
振り返ってみると、未知の分野に挑戦するという決断は、僕のキャリアにとって非常に価値のあるものでした。
今でもなお、新しい事にチャレンジすることの大切さを日々実感しています。
Q. 新しい技術やトレンドを取り入れる上で、どのようにインプットしていますか?
A. 新しい技術やトレンドに関する情報は、主にSNSを通じてインプットしています。
XやInstagram、Pinterest、Behance、Vimeo….など。
色々なプラットフォームを活用して、気になったものはフォルダ分けしてブックマークしています。
最近はAIをはじめ、日々新しい技術が登場しているので、実際に使用するかは別としても、情報は常にキャッチしています。
ただし、トレンドに囚われ過ぎないようにはしていて。
流行っているものは、それだけ多くの人が手を出しているということだし、それもすぐに埋もれてしまう可能性があります。
だからこそ、新鮮味を常に意識しています。
また、自分は昔から「温故知新」という言葉を大切にしていて、古いものから新しい発想を引き出すことを常に心掛けています。
SNSは新しいトレンドを探るツールとして活用していますが、デザインやコンセプトについては、年代やジャンルを問わず、実際に気になった書籍や画集を買って、作品に活かせるようにインプットしています。
先人たちが残した作品を自分の中で咀嚼して、それを自分のプロジェクトに反映させるようにしています。
Q. これまでの人生で最も影響を受けた映画やアーティストは誰ですか?
A. 影響を受けた方は数え切れない程いますが、その中でも特に衝撃を受けたのは、
– 映画監督ウォン・カーウァイの「恋する惑星」
– MVディレクターのJodebとSalomon Lighthelm
– 漫画家の大友克洋さん、浅野いにおさん、岸本斉史さん
ですね。
「恋する惑星」を大学生の時に見た時には新たな発見がたくさんありました。
構図と照明で見せる香港のアンダーグラウンドな景色は、自分がそれまで見ていたどんな映画とも異なるものでした。
ウォン・カーウァイの作品で使われる照明表現は、日本のMVにも大きな影響を与えていると感じます。
「恋する惑星」/ ウォン・カーウァイ
JodebとSalomon Lighthelmという海外のMVディレクターたちは、日本のMVを主に見ていた自分にとって衝撃的でした。
歌詞が分からなくても、映像だけで楽曲の世界観を伝える彼らの手法は、映像制作をする者として理想的なアプローチだと考えています。
彼らの表現力には今でも驚かされ、新しい作品が出るたびにチェックしています。
大友克洋さん、浅野いにおさんといった漫画家の方々の作品は、自分がクリエイティブというものをはじめて意識したきっかけでした。
ストーリー、キャラクター、コマ割りから全てをゼロから作り上げるその過程。
映画やMVと同様に、構図を通じて意図を伝える技術は、今でも自分に大きな影響を与えています。
インプットのためにも愛読している、大友克洋さん、浅野いにおさんの作品
Q. 映像制作以外に情熱を注いでいることはありますか?
A. 二年前から犬を飼い始め、最近はご縁があってもう一匹を家族に迎えました。
以前は自分中心の生活でしたが、犬たちを迎えてから彼ら中心の生活リズムに変わり、仕事とプライベートがはっきり分かれてメリハリがつき、仕事に対する姿勢もより前向きになりました。
愛犬のミミ(左)とロク(右)
彼らからは日々、癒しをもらっています。
たまに会社に連れて行くと、犬を通じてメンバーとコミュニケーションを取る機会が増えたり。
彼らがいてくれることに日々感謝しています。
オフィスでは、ミミもロクもTHINGS.メンバーとして馴染んでいる
いつまでも元気でいてほしいので、ご飯代のためにも、これからもっと頑張りたいと思っています。(笑)
Q. THINGS.でのこれまでのキャリアパスを振り返って、最も影響を受けたプロジェクトは何ですか?
A. これまで様々な案件に携わらせていただきましたが、
ユトレヒトさんの「HEX」の制作は、自分にとっても、会社にとっても新たな挑戦の一つでした。
それまでに制作してきたMVでは、イラストレーターさんと連携して、長くてもおよそ1ヶ月で数枚から数十枚のイラストを完成させていました。
しかし「HEX」では、企画から約半年をかけ、アニメーション制作会社や色々なクリエイターのご協力を得ながら、設定資料、ストーリー、コンテ、背景美術、キャラデザ、撮影処理など…
イラスト制作以外も併せて、通常の倍以上のステップを経験しました。
自分は高校時代に映像学科への進学を決めたときから、徐々にアニメへの見方が変わっていきましたが、「HEX」の通じて、その見方だけでなく、映像制作に対する意識も大きく変わりました。
「作品が視聴者にどう受け入れられ、どんな影響を与えるのか」ということをより深く考えるようになり、チームで何かを生み出す喜びと、各自の役割の大切さを改めて感じました。
Q. 自身のスキルやキャリアにおいて、今後挑戦したいことはありますか?
A. イラストレーターやアニメーターの知識を、より多くインプットしていきたいと思っています。
「HEX」以降、絵コンテ作成の機会が増えてきたことで、自分の中でイラストやパースに関する知識を深める必要性を感じはじめました。
そのきっかけは、あるときイラストレーターさんやアニメーターさんと制作していく中で、「レイヤー分けや調整作業の大変さを理解していないのは良くない」と気づいたことです。
共に制作するチームに対して、自分の想いをより具体的に共有するためにはどうすればよいか。
その「どうすれば」への理解を深めたいという意欲が、イラストを学び始める大きな動機の一つとなりました。
そうしてインプットを重ねていくうちに、実写における照明や構図の技術、3DCGで必要とされる人体や建造物の構造への理解がより深まり、結果的に、自分の作品のクオリティ向上にとても役立っています。
自分の仕事以外の知識を深める。
今後はより大きなプロジェクトや新しい分野にも挑戦したいので、こういったインプットに、これからも取り組んでいきたいです。
Q. 業界の将来に対するあなたの想いは?
A. 自分が映像を始めた時に比べ、昨今は世の中にはパソコンや機材が豊富にあって、クリエイター人口や作品も倍以上になっていると感じます。
実際X(旧:Twitter)を見ていると、学生の方々が企業案件をしていたり、自主制作でありながら、非常にクオリティの高いアウトプットをしている方がいたりと、業界全体がかなり盛り上がっていると思います。
自分はそういった環境の中で、「年代やジャンルを問わず、さまざまなクリエイターの方々と共に作品を作り上げてみたい」という想いがあります。
なぜなら、自分とは別の世代、特に若い世代のクリエイター達が今、何に影響を受けて、それをどのように作品に投影しているのかに興味があるからです。
なのでまずは、SNSなどを通じて、自分よりも若い世代のクリエイターとコミュニケーションを取ることから始めてみたいと思います。
人との繋がりがあって、今の自分があります。
色々なクリエイターやプロジェクトと関わりあえたことで、より多くの成長機会に巡り会えました。
今後はそういった機会を、他の誰かに与えられるような存在に自分もなりたいです。
打ち合わせをしている Ko Sato(左)とAKITO(右)
AKITO (3DCG Artist / Motinon Graphic Designer)
2019年大阪芸術大学映像学科卒業後、THINGS.に所属。
学生時から映画、ミュージックビデオのディレクション、エディット、カラコレに取り組む。
現在は、モーショングラフィックス、3DCG、を得意とする。
ジャンルに問らわれない映像、デザインを常に表現、構成することを追求している。
2024.11.01
2024.11.01
2024.10.31