
2024年11月、株式会社THINGS.への社名変更とタイミングを同じくして、XR領域における新規事業部として立ち上げられた「emmett.」(読み:エメット)。
今回は、emmett.の主軸メンバーである中山に、自身がXRコンテンツに興味を抱いたきっかけや体験したコンテンツ、今後の展望などについて、感じていることを語ってもらいました。
XRコンテンツとの出会い

私がXRコンテンツに興味を持ったきっかけは、アニメ「ソードアートオンライン」でした。
社会の受容態勢と技術的な限界によりXR領域は一時期の低迷を経験しましたが、昨今のMeta Quest 3の普及やApple Vision Proの登場により、XRコンテンツは再び急速に注目を集めています。
Vision Proの発表は、Apple好きとしてはとてもワクワクする発表でした(笑)
公式発表前にも噂や記事は調べていましたが、当時配信を見て胸がアツくなったのを覚えています。
Apple Vision Pro用のアプリや使い方など、今はまだApple・ユーザー共に手探り状態なので、今後どうなっていくか楽しみですし、そこで自分もクリエイターとして何かを作れたら嬉しいなと考えています。
変わりゆく映像体験
Apple Vision Proの体験会で初めてVRデバイスを装着した時の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。
その没入感は従来の映像概念を覆すものでした。
映像を学んできた者として長年抱いていた「16:9という平面的制約からの解放」の可能性を、はっきりと感じ取ることができました。
スマートフォン/SNS/YouTube等の普及によって映像コンテンツが我々の生活の一部となったように、
XR領域においても今後より軽量なメガネ型デバイスなどが普及すれば、映像表現の新たな可能性は更に広がるでしょう。
2D空間に留まらない空間全体へのアプローチや、企画や表現に応じた自由なアスペクト比の活用が求められると考えています。

Apple Vision ProやMeta Quest 3の使用して画期的に感じた映像体験の一例として、
例えばVRゴーグル内では、視聴する画面の大きさを自由に変えることができるので、まるで映画館の大きなスクリーンで映像を見ているかのような体験を楽しむことができます。
大きなテレビやプロジェクターがなくても、自宅で映画館同様の映像体験ができてしまう。
実際の映画館だと、つい周りの観客を気にしてしまう瞬間もありますが、自宅でVRデバイスをつけることで、自分だけのプライベート映画館のような映像体験ができるのは最高です。
VRデバイス内には、任意の位置に複数の映像を配置することもできるので、映像を空間に複数配置してインスタレーション的に1つの作品にするパターンも生まれるかもですね。
(制作が大変そうですが…笑)
新しい表現の萌芽 / VRchatとパーティクルライブ

MetaQuestなどのVRデバイスの普及と共に、ソーシャルVRアプリ“VRChat”が盛り上がりを見せています。
VRChatの魅力の一つとして、多くの人々が幼少期に憧れたアニメやゲームのような世界を、主観的に体験できる点があると考えています。
また、VRChatにおけるアバターを通じたコミュニケーションは、従来のチャットツールとゲーム「どうぶつの森」のような要素を融合させた、仮想現実の完成形に近いものであると評価されています。
ユーザーが好きなものを通じて好きな人と集まる場所が生まれていたり、従来のチャットツールとは異なり、実際に対面で会話をしているような構造になっていることがとても面白いです。
VRChat内には様々なワールドが存在し、独自の文化も生まれていて、それらはすごく新鮮です。
お砂糖さん※ や、VRChat内で出会ってリアルで結婚されてる方など、国のような新しい共同体が形成されている感覚があります。
現実の世界だと物理的距離や金銭的問題が発生しますが、VRChatではネット環境とデバイスさえあれば会いたい人に会うことができるし、その距離感はビデオ通話とはまた違う感覚のものだと思います。
※お砂糖さん…ソーシャルVRの中でのカップル関係のことを表すスラング
「Complex 7」というワールドは、ロボットと猫が住む荒廃した未来の世界観のワールドなのですが、サイバーパンクの世界が作り込まれていて、猫も可愛かったです(笑)
居酒屋のメニューが、リアルな日本の居酒屋のメニューになっていて日本人的にはグッと親近感が湧くポイントでした。
中山がVRChat内でワールド「Complex 7」を訪れた際のキャプチャ



特筆すべきは、VRChat上で展開されているパーティクルライブ※です。
従来の映像演出に加え、3Dオブジェクトやリリックモーションを組み合わせた新しい表現が生まれています。
※パーティクルライブ…バーチャル空間上に仕掛けをして、光を飛ばしたり物体を見せたり、観客の視界をジャックして映像を見せることで演出をするライブの総称
emmett.はパーティクルライブについて、弊社が持つリリックビデオやグラフィックデザインについての知見を活用できる領域であると考え、今後の活動の展開先として注目しています。
私が初めてパーティクルライブに参加したのが「FZMZ 1st LIVE “DEEP:DAWN”」だったのですが、リアルの世界では実現できない全く新しいライブ体験でした。
天地やオブジェクトの大小、視点がセットリストを通して目まぐるしく変化し、場面展開されていくのがとても面白かったです。
中山がVRChat内で「FZMZ 1st LIVE “DEEP:DAWN”」に参加した際のセルフィー

今後VRchatではより様々なワールドやパーティクルライブなどが増えていき、色々な人が集まって新しいことが生み出されていくのだと思います。
その反面、様々な側面の課題や問題が今後発生すると思いますが、ポジティブな面を捉えて、向き合いながら自分も発信していきたいです。
弊社がこれまで培ってきた技術をXR領域でどう発揮することができるか、ワクワクしながらアイデアを考えています。
映像制作者としての使命
VRデバイスがスマートフォンのように普及する未来に向けて、私たち映像制作者は常に新しい表現技法を追求する必要があります。
XR技術の進化は、制約からの解放であると同時に、かつてない表現への挑戦機会でもあります。
日々進化するXR技術と、そこから生まれる独自の文化。
この潮流に遅れることなく、先導する立場として、技術と表現の可能性を追求していきたいと考えています。



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